58歳ベテラン
従業員/竹本さん

経験も口も
まだまだ若手には負けない

「パワハラ」という言葉が世間を賑わし、上司が部下に怯える中、竹本さんは一味違う。「何がパワハラだコノヤロー!」とニコニコ話す目には、後輩はもちろん、次世代を担う若手を育てるための愛情が溢れている。

元々、農家を営んでいた竹本さんは、南幌土建と農家を兼業していたという。そして農家に専念するために一度退社。その後農家をリタイアしてから、南幌土建に戻ってきたのだという。「他の仕事に就くことも考えましたか?』と聞くと「他の会社に行ったりもしたんだけどね、南幌土建のように労働三法をしっかり守っているところってなかなかないんだよ。この仕事は危険と隣り合わせなことも多いからね、そういった保証がしっかりしてたほうが家族も安心するしょ」というのだ。また、南幌土建は作業員にもボーナス手当が支給されるので、大切にされていると感じることも多いそうだ。自分の価値を認めてくれるというのは、働いていく中でとても重要なのかもしれない。

数学の壁とスマホの時代

土木の現場では咄嗟に関数やルート、円周率の計算が必要なこともあるという。そう、多くの人が「どうせ大人になったら使わないよ」と言ってきた、あの数式の数々だ。計算を間違えば失敗や事故につながることになりかねない。その重大さがわかっている先輩は、つい声が大きくなることも。特に円周率は厄介なことに「3.14」で習っている世代と、「3」で習っている世代で計算がずれてきてしまうらしい。そうなると工事にも支障が出てしまうので「何が3だ。3.14で計算しろー!」と声を張り上げる竹本さんだが、若手だって引き下がっていない。「これでいいんでしょ」と土木用計算サイトですぐに計算してくるらしい。「すごい時代だよな。スマホでピピっと計算しちゃうんだもんな。天気予報だって正確だもんな~。」と、最近ではITの進歩に押されがちのようだ。
私は、土木は力仕事がメインだと思っていました。
しかし、難しい計算をして、テキパキと工事をこなし、さらに若手を思いやる。そんな「できる大人」が集結していることに気付かされたのでした。

「このやろー!」
若手を育てる大きな声と優しい笑顔

現場で若い従業員たちの様子を観察し、どうやってその子を育てるか試行錯誤しているという竹本さん。「性格を見ながら褒めたり、怒ったりしながらやってるけどね。今にその若手たちにも後輩ができるだろう?その時にちゃんと教えれないと困るからね。それに、これからは外国人が来るかもしれない。そうなったらどうすればいいんだろうね。翻訳アプリ?そんなの使ってらんねーよ!笑」
竹本さんの言う通り、これからは外国人労働者も増え、言葉が通じないシーンや機械化・自動化が進むだろう。でも、現場には絶対に人間の経験と技術が必要だと思う。そんな時、竹本さんのように、「このやろー!」と声を荒げながらもニコニコと現場を仕切る「元若手」がいることを願わずにはいられない。
こんなにも若い従業員たちの成長を願い、愛情深く見守り、怒鳴ってくれる先輩がいる南幌土建の若手は幸せだなと感じたのでした。