もうひとつの顔は米農家
従業員/服部さん

ベテランの下積み時代

今日の現場は川沿い。風を防ぐものが何も無く、強風の日には開いた車のドアが壊れたこともあるらしい。The 北海道といった素晴らしい景色の中、服部さんは笑顔で待っていてくれました。
服部さんの家の本業は米農家。田植えと稲刈りの時期は南幌土建を休んで農業に従事する兼業従業員さんです。このサイクルを18歳から
続けているというから驚きだ。「大変じ ゃないですか?」という平凡の質問にも「お金がないからだよ~ガハハハ」と笑う服部さん。
そんな明るい服部さんも、若い頃は苦しい思いもしたそう。

「18~40歳くらいまでは自分より若い奴がいなかったんだよ。先輩は怖いし、仕事はやらせてもらえないし、辞めたくて仕方なかったな」と振り返ってくれました。「仕事は見て覚えろ!」っていう時代だったから、じっくり教えてもらうこともなかったな。先輩の仕事を見て、隙をみて実践するのを繰り返してた」こうしていくうちに仕事を覚えていったという。それから30数年。今では現場に服部さんがいる安心感があるのは、若い頃から積み重ねてきた努力の証なのだろう。

「辞めたきゃ辞めりゃいい。」

辛い時期が続き、ついに先輩に相談した時のこと。「そんなに辛いなら辞めればいい」とあっさり言われたという。「「あ、そっか」って思ったんだ。いつでも辞められるんだと思ったら気が楽になったんだよ。」
そうして1年、また1年と、頑張っていたら続けてこれたんだとか。仕事をやらせてもらえないジレンマを抱えるんじゃなく、「先輩に甘えよう」と考えを変えたと話してくれました。
自分の考え方を変えるのは、言うほど簡単ではない。我が道を突き進む生き方もかっこいいが、服部さんのように、柔軟に考え方を変えながら自分を成長させ、強くなっていく生き方もとても尊敬できるものでした。
「1年365日。生きていれば何かしら学んで吸収することがある。だからきっと続けてこれたんだろうな」と服部さん。人は目に見える大きな成長に目が行きがちだが、些細なことでも自分を認めることが出来たら、もっと仕事は楽しくなるに違いない。現代に生きる若者にも大切なことだと感じました。

昔は先輩に甘え、今は後輩に甘えてるよ。

今ではたくさんの後輩に恵まれている服部さん。「若い子と働くのは楽しいよな!学ぶこともたくさんあるし、新鮮だよ」
とまるで我が子を見守るような目で語っている。「いろいろ教えたくなるんじゃないですか」と聞くと、「あーしなさい、こーしなさいは言わないよ。いくら口で言っても、やってみて初めてわかることがあるからね。あと、やってみないと何言っても聞かないべ?」と笑う服部さん。54歳を迎え、今の南幌土建の若手は自分の子供より若い世代がほとんど。
「もう力じゃ若いのには勝てないよ。昔は先輩に甘え、今は後輩に甘えて力仕事はお願いしてるんだ。笑」そんな服部さんの話を聞いていたら、現場にいた若手はどんどん作業を進め、姿が見えなくなってしまっていました。
田植えの準備が始まる頃、また少し成長した後輩に仕事を託して、「また寒くなったらな~!」と家業に戻っていくのだろう。